本日、北海道で唯一の「農業実践科コース」3ヶ月の短期コース(青少年自立センタービバ主催)において、初めての授業(午前中3時間)を担当。第1回は「有機農業の原理と技術」について。一昨日はエコビレッジで2時間ちょっとの講義もして、「農民芸術学校」の出張講座みたいな感じが続く。とりあえず、第1回のために、まとめたレジュメをUPします。来週第2回は果樹栽培について講義します。
有機農業の原理と技術 2012. 5. 7. 牧野時夫
1.有機農業とは何か
1-1.有機農法⇔慣行農法(近代農法、科学農法、収奪農法)
化学肥料(火薬)と化学合成農薬(毒ガス)を使用しない農法
+放射線照射を行わない 1970代~ ガンマ線照射ジャガイモ(日本)
+遺伝子組換え作物(GMO)を使用しない 1990年代~
交配によらず細菌・動物などの遺伝子(gene)を様々な人為的方法で組込む
1-2.有機農業運動
ヨーロッパの場合 地下水汚染問題~政治主導
日本の場合 残留農薬問題~消費者運動+農薬による健康被害農家
レイチェル・カーソン「沈黙の春」1962、有吉佐和子「複合汚染」1975
1-3.なぜ有機農業なのか
①自然と共存する農業を構築する(自然を支配する農業からの脱却)
化学的・物理的意義
地力(土壌肥沃度)を長期的に維持、増進させる
堆肥~土壌構造の改善、有機物の吸収はない?
生物学的意義
安全で、栄養価が高く、味の良い食品を供給する
残留農薬害(発ガン性、変遺伝性)~生物濃縮
亜硝酸害、ミネラルバランス
作物・家畜本来の生理生態に即した栽培・飼養環境を与える
適度なストレスは必要
生態学的意義
土壌微生物、動植物の生態学的循環を守り、発展させる
環境保全型、持続可能(サスティナブル)、循環型
遺伝的多様性の保護
GMO禁止の最大理由
社会的意義
農業技術に起因する公害、自然破壊を避ける
土壌浸食、塩類集積、環境ホルモン
農地の多面的機能の保全
ダムとしての水田、生活環境(アメニティ)、景観
②人間的な農業を創出する(人間疎外の農業を克服)
農産物を商品ではなく食物として考え、消費者の健康と豊かさを守る
経済<生命、医食同源
経費の節約と、資本支配(資材・流通)からの脱却と自立
経済的意義もある
地域内資源の有効活用と、廃棄物の再活用(リサイクル)
家畜・人糞尿、作物残渣、生ゴミ、絞り粕、ホエイ、バーク、
剪定屑・・
流通に伴う経費、エネルギーの浪費を省き、公害や事故を防止する
地産地消、フードマイレージ
人権と公正な労働の保障
安全な労働環境、労働に対する適正な報酬と満足感を得る
金銭だけで計れない価値(幸福度)
過去の重労働と被搾取状態に逆戻りしてはならない
農村文化の保全
農業・農村が持つ社会的・文化的・教育的価値の尊重
スローフード(伝統品種、伝統食)
自給的、永続的な社会(コミュニティー)の創出
生産者と消費者が相互理解と信頼に基づく友好的で顔の見える関係を築く
CSA(Community Supported Agriculture)
提携(Teikei)~日本有機農業研究会 1971~
2.有機農法と自然農法
有機農法(organic farming)⊃自然農法(natural farming)
無農薬 + 不耕起、不除草、不施肥(無肥料)
狭義の有機農法=科学的有機農法(ビオ・ロジック)
ハワード卿 「農業聖典」1940 インドール式処理法
1951 英国土壌協会
ロデイル 「Pay Dirt(黄金の土)」1945 (酪農学園訳 1950)
自然農法
岡田茂吉 1935~ MOA(世界救世教)、神慈秀明会
EM菌(有効微生物群)1980代~ それ以前は厩肥は不可
福岡正信 1937~(わら一本の革命)~粘土団子
川口由一 1970代~(妙なる畑に立ちて) 「自然農」 赤目塾
赤峰勝人 1986~ 「循環農法」 なずなの会
木村秋則 1978~ (奇跡のリンゴ) 「自然栽培」
林幸美、城雄二 2000代 「炭素循環農法」
バイオ・ダイナミック農法(=ビオ・ディナミ)
~ルドルフ・シュタイナー1924
調合剤、天体の運行(太陰暦、黄道十二宮、惑星)、人智学
パーマカルチャー~ビル・モリソン 1979~
天然農法 ~藤井平司 1970代~
立体農業 ~賀川豊彦 1933「立体農業の研究(ラッセル・スミス)」
韓国自然農法 趙 漢珪(チョウ・ハンギュ) 1960代~ 天恵緑汁
3.有機農産物の基準
IFOAM(国際有機農業連盟)基準
有機JAS規格
許可された肥料、農薬以外を3年以上使用していない圃場で生産された
ことを認証機関に認定されることが必要(有機肥料でない肥料でも天然
由来や微量要素、有機合成物質でない無機農薬・天然由来で安全性の高い
ものは使用できる)
特別栽培農産物
無農薬栽培(2年以上無農薬、化学肥料は使用可)
減農薬栽培(50%以上減)
無化学肥料栽培(2年以上無化学肥料)
減化学肥料栽培(50%以上減)
北のクリーン農産物(Yes! Clean北海道)
農薬30%以上減、化学肥料(窒素)30%未満、除草剤不使用、
生産者団体ごとに認定
(字数制限があるので、後半は次記事に分けてUPします)