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求職者支援制度「農業実践科コース」で初講義(その2)

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本日の講義レジュメ 後半です

4.有機農業の技術
  4-1.生態的循環を阻害する合成物質の排除、生命(遺伝子)操作の回避
   ①殺菌剤、殺虫剤、除草剤、土壌殺菌剤、成長調整物質剤(いわゆる植物ホル
    モン剤=正確には植物ホルモンは天然物質を指す。ジベレリンなど天然と同
    成分の合成物もあるが、排除しきれない不純物が問題→トリプトファン事件)
    の不使用
   →使用できる農薬(有機JAS)
    除虫菊乳剤、硫黄、銅(無機)、マシン油、重曹(炭酸水素Na)など
    なぜか食酢も農薬に、他の天然由来は農薬登録できず植物保護剤などの名目
    で販売
   ★天然物質でも毒性の強いものがある(アセビ、タバコ、トリカブトなど)
   ★市販品には合成品を混ぜたような粗悪品あり注意
②化学肥料の不使用
    土壌微生物環境の保護、河川や農作物の亜硝酸汚染の防止(発ガン性物質の
    生成)化学合成農薬とは違い、化学肥料は天然の成分と同じもの。よって上の
    観点からは堆肥などへの化学肥料の限定使用(尿素、石灰窒素など)はあり得
    るし、有機肥料であっても未熟堆肥などの大量投与は亜硝酸汚染を招くので好
    ましくない。堆肥原料を厳密に有機栽培のものに限ることは難しいが、望まれる。
   →使用できる肥料・土壌改良剤(有機JAS)
    植物・動物由来、グアノ(海鳥やコウモリの糞が堆積したもの)、天然物質ま
    たは化学的処理を行っていない天然物質由来(天然鉱石など)のものでれば化
    学肥料と同成分の物質でも許可されている(硫酸カリ、塩化カリ、硫酸苦土、
    水酸化苦土、よう成リン肥、炭酸カルシウム、石灰)、微量要素(欠乏の場
    合、例外的に許可)、汚泥コンポストは、凝集剤不使用に限り、重金属などの
    チェックが重要。
  ③家畜への合成薬物(抗生物質、ホルモン剤、駆虫剤など)の投与の禁止
    もちろん飼料も、有機農産物でなくてはならない。GMO飼料に注意。
  ④生産物に対する化学的処理(着色、漂白、保存料添加など)や、放射線照射の
    禁止
  ⑤遺伝子組換え作物(GMO)の禁止(日本では一般圃場での栽培不許可)
    可能な限り一代雑種(F1品種)を避け、自家採種できるもの(エアルーム品
    種)を選ぶ
  GM作物(第1世代)は、殺虫成分、除草剤(ラウンドアップ)抵抗性、保存性増
   大などの遺伝子を導入、農薬使用の低減を可能にしたものもあるが、問題多。 

 4-2.生態学的な技術の利用
  ①土壌への有機質の還元(有機農業の基本)と、有機質を分解する微生物の保護
   堆肥、厩肥(牛糞、馬糞、鶏糞)、下肥(人糞)はJASでは禁止だが汚泥コン
   ポストは可、バーク堆肥、ぼかし肥(少量で効果)、草木灰、籾殻くん炭、
   緑肥(イネ科、マメ科、ヒマワリなど)の鋤込み、有機質マルチ
   食品加工副産物(コーヒー粕、ジュース粕、醤油粕、ワイン澱、おから、廃糖
   蜜)、米糠、油粕(菜種粕、大豆粕、綿実粕など)、魚粉(フィッシュミー
   ル)、カニガラ、ウニ殻、ヒトデ、珊瑚、カキ殻、ホタテ殻、ケルプ(海
   藻)、グアノ、肉骨粉(BSEで入手しにくくなった)、血粉
★2011年3.11以降は放射能(セシウム)を注意しなければならない!
 ②適地適作、適期栽培
   病気や害虫がつきにくいだけでなく、地場の旬のものは、美味しく栄養価高く民
   族の体質にも合う(身土不二)~人種による消化器官、消化酵素の差異
   あえて害虫、病菌の発生時期を避けて播種する~ダイズ、ダイコン
 ③耕種的防除・機械除草
   病害虫のつきにくい健康な作物に育てることが基本
    風通し、日当たり、水はけを良くする、徒長防止(窒素過多を防ぐ)
   耐病性・耐虫性台木の利用
   手押し除草機、カルチベータ
 ④物理的防除・除草(光・熱・音・風・水などの利用)
   温湯消毒、日光消毒、誘蛾灯、防蛾灯、防虫ネット、防草マルチ(できれば紙な
   ど分解性のもの)、トラップ(蠅取紙)、米糠散布による田圃の雑草抑制、水管
   理による除草、雨よけ栽培、特殊フイルム・マルチ(UVカット、シルバーマルチ)
 ⑤生物的防除・除草
   天敵の保護、天敵農薬の導入(外来昆虫は注意)
    捕食性昆虫(テントウムシ、カマキリ)、捕食性ダニ(カブリダニ類)、
    寄生蜂
   微生物農薬
    微生物そのものを利用するもの(昆虫病害性糸状菌、拮抗菌など)
    微生物の出す成分を利用するもの(BT剤)
   フェロモン・トラップ(シンクイコンなど)
   動物による除草
    ヒツジ、ブタ、ガチョウなどによる果樹園の除草
    アイガモ、コイ、タニシ、カブトエビなどによる水田の除草
   カバークロップ、浮草による雑草抑制
   忌避植物、トラップ植物、バンカー植物の利用
     対センチュウ~アフリカンマリーゴールド、エンバク
   天然農薬(自然農薬)
     除虫菊、ニーム(インドセンダン)、クララ、アセビ、クスノキ、タバコ、
     木酢液、食酢、ストチュー(食酢+黒砂糖+焼酎)、牛乳
     植物エキス(ヨモギ、スギナ、ドクダミ、ニンニク、トウガラシ)
 ⑥輪作・混作の利用
    共栄作物(コンパニオン・プランツ) トマト+バジルなど
    他感作用(アレロパシー) 麦の根から出る天然除草成分など
 ⑦耐病性、耐虫性品種の導入
    既存品種は農薬・化学肥料使用前提に育種(緑の革命の失敗に学べ)
    ただし、遺伝子組換えによらないこと
    品質との兼ね合いが難しい(品質と栽培性は相反しやすい、コシヒカリ)
 ⑧家畜の生態に合った健康的飼育
    平飼養鶏、放牧酪農、放牧養豚

 4-3.資源とエネルギーの節約と自給
  ①石油製品(農薬、燃料、被覆資材など)からの脱却
    天然由来製品、バイオ燃料(木質、メタン、アルコール、BDFなど)
    紙マルチ、油紙などの利用
    農耕牛馬、人力農具、自然エネルギー(小風力、小水力、パッシブソーラー)
    小規模複合(零細多角)経営が望ましい
  ②家畜や人間の糞尿、作物残渣、生ゴミなどを資源として活用   
   肥料、飼料、燃料(バイオマス発酵)としてリサイクルし廃棄物を出さない
   →ゼロ・エミッション
    農場・地域内で循環を完結=ゴミ問題解決、地力維持、資材費節約の一石三鳥

 4-4.流通の改革
  ①産地直送・産消提携
   大量生産・大量流通・大量消費の弊害
    流通合理化を目的とした主産地形成による地場生産の破壊
    規格化による過剰選別がもたらした生産現場での非合理化
    産地間競争による過剰生産と価格暴落、それに伴う生産調整の無駄
  →顔の見える関係で、新鮮で安全な食物を、相互理解の下に届ける
    CSA(地域が支える農業)、朝市・マルシェ(農家マーケット)
    提携グループ、野菜ボックス宅配、自然食品店
  ②地域内自給
   地場の旬のものを食べることで、健康も維持でき、長距離輸送による交通問題
   やエネルギー浪費を見直すことにもなる。
   自給により、依存したり搾取したりという関係を脱し、自立することができる。
   南北格差による飢餓問題に加え、人口爆発により絶対的食糧不足の時代に
   →国際分業論は世界的な非難の的であり、食糧自給は国としての責務でもある。

まとめ
   <有機農業は、農業の本来あるべき姿であり、未来の社会の核となるもの。>
国~ 1970年代、有機農業を、非科学的なものとして冷遇。環境保全型農業とい
    う言葉を使う。
   1989年 農水省に有機農業対策室設置
   1993年 消費者ニーズに応える形で有機農産物に関する特別表示ガイド
    ラインを通達
     特殊な高付加価値農産物の生産方法として矮小化
   2000年 有機JAS規格を制定
   2006年、「有機農業の推進に関する法律」制定
     有機JAS認定の農産物は、未だに1%に満たない流通量である。
     ヨーロッパでは数%、キューバではほとんど!(ミミズ利用が発達)
 

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